
この記事の著者:木下 優 (Kinoshita Masaru)
元消防士 / 防災危機管理アドバイザー
消防署での勤務歴15年、現場でのガス漏れ通報対応数は300件以上。「現場を知るプロ」として、家庭内の火災予防や災害時の初動マニュアル作成、防災セミナー講師として活動中。
帰宅してドアを開けた瞬間、キッチンから漂う「腐った玉ねぎのような臭い」に、心臓が止まりそうになっていませんか?
「ガス漏れ? どうしよう、爆発するかも」
「換気扇を回すべき? それとも電気を消すべき?」
今、この画面を見ているあなたは、恐怖でパニックになりかけているかもしれません。
でも、焦らないでください。
元消防士として断言します。
この手順通りに動けば、あなたは助かります。
結論から言います。
まずは「窓を全開」にすること。そして「電気のスイッチには一切触らない」こと。
これだけで、爆発のリスクは劇的に下がります。
さあ、深呼吸をして、私の指示通りに行動してください。
【最優先】今この瞬間、絶対にやってはいけない「3つのNG行動」
いいですか、今すぐ動きを止めて聞いてください。
ガス漏れが疑われる状況で、爆発を防ぐために「絶対にやってはいけないこと」が3つあります。
これらは命に関わる致命的なミスになりかねません。
- 火を使わない
ライターやタバコはもちろん、コンロの火も絶対につけてはいけません。裸火は直接的な着火源となります。 - 電気スイッチに触らない(つけない・消さない)
これが最も重要です。部屋の明かり、換気扇、コンセント。これら電気スイッチは、ガスに着火する「着火源」そのものです。スイッチを「入れる」時だけでなく、「切る」時にも小さな火花(スパーク)が出ます。この火花が充満したガスに引火し、爆発を引き起こします。 - 電話をかけない(室内で)
固定電話やスマートフォンも電子機器です。通話時の微弱な電流や静電気が着火源になる可能性があります。連絡は必ず屋外に出てから行ってください。

「もう電気つけちゃった…」というあなたへ。そのままで大丈夫です
「記事を読む前に、もう電気をつけてしまった…」
「換気扇を回してしまった…」
そう思って青ざめているあなた。大丈夫です。落ち着いてください。
ここで慌てて電気を消したり、換気扇を止めたりしようとすることが、実は一番危険なのです。
先ほどお伝えした通り、電気スイッチと着火源は密接な関係にあり、スイッチを「切る(OFFにする)」その瞬間に火花が発生します。
つまり、「つけっぱなし」の状態よりも、「消そうとしてスイッチに触る」行為の方が、爆発の引き金になるリスクが高いのです。
ですから、もし既に電気がついていたり、換気扇が回っていたりしても、絶対にスイッチには触れず、そのままにしておいてください。
それが正解です。
「消さない」という勇気が、あなたの命を守ります。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 換気扇が回っていても、絶対に止めないでください。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、焦って止めようとした瞬間の火花で事故になるケースがあるからです。換気扇は「機械換気」であり、モーターやスイッチが着火源になり得ます。今は機械に頼らず、「窓を開ける」という「自然換気」に切り替えてください。この知見が、あなたの成功の助けになれば幸いです。
命を守る正しい手順:窓を開けて、外からガス会社へ電話する
NG行動を理解したら、次は安全を確保するための行動に移ります。手順はシンプルです。
1. 窓を大きく開けて換気する
換気扇(機械換気)ではなく、窓開け(自然換気)を行います。
ここで重要なのが、お使いのガスの種類によって「開けるべき窓」が違うということです。
- 都市ガスの場合:
都市ガスは空気より軽いため、天井付近に溜まります。「高い位置にある窓」を開けてください。 - プロパンガス(LPガス)の場合:
プロパンガスは空気より重いため、床付近に溜まります。「低い位置にある窓」や玄関ドアを開けてください。ほうき等で床の空気を外に掃き出すのも有効です。

2. ガスの元栓を閉める
もし余裕があれば、ガスの元栓(メーターガス栓)を閉めます。
ただし、火花が出るリスクがあるため、無理に探したり、暗い中で操作したりする必要はありません。
あくまで「できれば」で構いません。
3. 屋外へ避難し、ガス会社へ連絡する
窓を開けたら、携帯電話を持ってすぐに屋外へ出てください。
そして、安全な場所から「ガス会社」へ連絡します。
ここで管理会社や大家さんに連絡しようとする方がいますが、緊急時は直接「ガス会社」へ電話してください。
なぜなら、ガス会社と管理会社では、緊急時の対応能力に明確な役割分担があるからです。
ガス会社は24時間365日体制で、専門の機材を持った緊急出動班が待機しています。
検針票やガスメーターに記載されている緊急連絡先へ、迷わず電話してください。
ガス漏れじゃなかった?臭いの原因と復旧方法
ガス会社に点検してもらった結果、「ガス漏れはありませんでした」と言われることもあります。
「えっ、でもあの臭いは何だったの?」と不思議に思うかもしれません。
ガス漏れと間違えやすい臭い
実は、以下のような臭いをガス漏れと勘違いするケースはよくあります。
- 腐敗した玉ねぎやニンニク: キッチンの隅で食材が傷んでいませんか?
- 排水溝の臭い: 下水から上がってくる臭気。
- 新しい家具や接着剤: 化学物質の臭い。
これらは「誤報」ですが、通報したことを恥じる必要はありません。安全確認が最優先です。
ガスが止まっている場合の復旧(マイコンメーター)
安全が確認された後、ガスが出ない場合は、ガスメーター(マイコンメーター)の安全装置が作動している可能性があります。
メーターの赤いランプが点滅している場合は、以下の手順で復帰できます。
- すべてのガス機器を止める。
- メーターの「復帰ボタン」のキャップを外し、奥までしっかり押して、すぐ離す。
- 赤ランプが点滅から点灯、または消灯するまで約3分待つ。
- ランプが消えれば、ガスが使えます。
※操作方法はメーターの種類によって異なるため、付属の説明書やガス会社のHPも参照してください。
怖かったですね。でも、正しい行動ができたあなたはもう安全です
突然の異臭、爆発への恐怖。本当に怖かったと思います。
でも、あなたは今、この記事を読んで「窓を開ける」「スイッチに触らない」という正しい行動をとることができました。
「電気をつけてしまった」と自分を責める必要はありません。
そのままにしておいた、その判断こそが正解だったのです。
ガス会社への連絡が済み、屋外にいるなら、もう大丈夫です。プロの到着を待ちましょう。
今夜はゆっくり休んで、落ち着いたら、もしもの時のためにスマホに「契約しているガス会社の緊急連絡先」を登録しておきましょう。
それが、未来のあなたを守るお守りになります。